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新しく法人成りする企業において、「創立費」や「開業費」は事業のスタートアップ期に発生する支出であり、その会計処理をどのように行うかは税務上の影響も大きくなります。
今回はこの2つの科目についてポイントを改めて整理していきます。

混同しやすい2つの費用「創立費」と「開業費」の定義

創立費と開業費を混同して考えていらっしゃる経営者の方は多いかと思います。
実際弊社のクライアント様とお話する際にも、「どのような違いがあるのか」を明確にご存知の方はかなり少ない印象です。

まずは、ふたつの違いについてご説明します。

【1】創立費とは?

その名の通り、会社を設立するためにかかった費用を指します。
具体的には、会社が法的に存在を確立するまでの過程で発生する費用が該当します。

具体的な例

● 定款作成費用、公証人認証手数料
● 会社設立登記にかかる登録免許税
● 設立登記のための司法書士報酬
● 創立総会や発起人会の費用
● 会社設立に関する交通費、通信費、印鑑代など

これらの費用は、会社設立という「イベント」に直接的に紐づくため、比較的線引きがしやすいでしょう。

【2】開業費とは?

会社設立後から実際に事業活動を開始するまでの間に発生した準備費用を指します。
会社は設立されたものの、まだ売上を上げる段階ではない、いわゆる「助走期間」に発生する費用です。

具体的な例

● 開業前の広告宣伝費(チラシ作成、ウェブサイト制作、SNS広告など)
● 市場調査費用、ビジネスプラン作成費用
● 名刺作成費用、パンフレット制作費用
● 営業開始前の研修費用、従業員への教育費用
● 事務所の賃借料(開業準備期間中のもの)、敷金・礼金のうち償却可能な部分
● 事務用品、消耗品、備品(10万円未満のもの)の購入費
● 事業用印鑑作成費用(会社設立後のもの)

開業費は性質上、幅広い費用が含まれるため、顧問先がどこまでを「開業費」として認識すべきか迷うケースが多々あります。
個別の費用について、「事業開始のために必要な準備だったか」という視点で判断基準を設けることが重要です。

創立費と開業費、なぜ「繰延資産」として処理するのか?


創立費も開業費も、一般的な費用とは異なり、会計上は「繰延資産」として貸借対照表の資産科目で処理されます。

これは、これらの費用が単年度で効果がなくなるものではなく、将来の複数年にわたって会社の収益獲得に貢献するという特性があるためです。

繰延資産として処理する理由

費用収益対応の原則: 費用の効果が将来にわたるため、その効果の及ぶ期間にわたって費用を配分することで、期間損益計算を適正化します。

経営実態の反映: 事業開始前の多額の支出を一度に費用化すると、創業初期の決算が過度に悪化する可能性があります。繰延資産とすることで、財務状況をより適切に表示できます。

分かりやすく言い換えると、「将来の利益獲得のために先行投資した費用であり、それを何年かに分けて少しずつ費用にしていくことで、会社の体力を無理なく維持できる」となります。

償却方法は「任意償却」が可能!税務上のメリットを最大限に

繰延資産である創立費と開業費は、会計上、どちらも5年で均等償却することとされています。他方、税法上は任意で償却が可能です。
つまり、通常の固定資産の減価償却のように法定耐用年数が定められているわけではありません。

任意償却のメリット

柔軟な税務戦略: 利益が出始めた年度に集中的に償却することで、課税所得を圧縮し、節税効果を最大化できます。
利益の平準化: 創業初期の赤字を軽減し、将来的に利益が出た際に費用化することで、利益への影響を平準化できます。

つまり、税法基準である任意償却を行う場合、会社の利益状況に合わせて、費用化するタイミングを自由に選べるため、例えば、創業初期の利益水準が低い時は償却を控え、利益が出始めたらこの償却により費用計上するということが可能となります。

任意償却のポイント

費用の明確な区分け: 設立前と設立後、事業開始前と開始後で発生する費用を明確に区別しましょう。

領収書・証拠書類の保管: 何が「創立費」や「開業費」に該当するかを後から確認できるよう、関連する領収書や契約書などを整理して保管しましょう。

償却計画: 事業計画や利益予測に基づき、最適な償却計画を作りましょう。
初年度から利益が見込める場合は全額を即時償却、しばらく赤字が続く見込みの場合は償却しないなど、会社の業績を踏まえて償却のタイミングを計ります。

任意償却の注意点

10万円以上の固定資産: パソコン、什器備品、車両など、10万円以上のものは「開業費」ではなく、通常の「固定資産」として減価償却の対象となります。
但し、一定の要件をクリアすれば、少額減価償却資産として即時償却の適用は可能です。

経常的な費用: 事業開始後も継続的に発生する家賃や水道光熱費などは、開業費には含めず、通常の経費として処理をします。

《仕訳の例》

(支出時)
開業費(あるいは創立費)/ 現預金


(償却時)
繰延資産償却      / 開業費(あるいは創立費)

決算申告書への書き方

別表16(6)、下段の「Ⅱ 一時償却が認められる繰延資産の償却額の計算に関する明細書」に記載します。

「支出した金額(24)」     …支出した金額を入力
「前期までに償却した金額(25)」…前期までに償却した金額を入力
「当期償却額(26)」      …当期に償却した金額を入力
「期末現在の帳簿価格(27)」  …「24」―(「25」+「26」)を差し引いた金額を入力

創立費と開業費を理解して、最適な税務戦略を!


いかがでしたか?

「創立費」と「開業費」は、事業のスタートアップをする上で非常に重要な論点です。繰延資産としての特性、そして任意償却が可能であるという税務上のメリットを理解し、最適な会計処理と税務戦略を練りましょう。

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税理士:金子 太妥志
税理士:金子 太妥志
【監修】税理士:金子 太妥志
東京税理士会(登録番号:112259)

監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。

2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。

 

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