【令和7年通達対応】フリーレントの会計処理と税務リスク!仕訳例から法人税・消費税まで徹底解説

こんにちは。マクシブ総合会計事務所です。

オフィスの移転や新規出店を検討する際、「フリーレント(一定期間の家賃無料)」という条件を目にすることがよくあります。
初期費用を抑えられるため借主にとっては非常に魅力的な契約ですが、いざ経理の実務に落とし込もうとすると、「無料期間中の仕訳はどうするのか?」「税務上、支払家賃の損金算入はどう扱われるのか?」と頭を悩ませる経理担当者の方も少なくありません。
実は、令和7年(2025年)4月1日以後に開始する事業年度から、フリーレントに関する法人税基本通達が新設され、税務上の取扱いに大きな変化がありました。
本記事では、新設された法人税基本通達12の5-3-2を踏まえ、会計事務所の視点から最新のフリーレントの会計処理・法人税・消費税の取扱い、実務上の留意点、そして具体的な仕訳例までを網羅して解説します。
マクシブ総合会計事務所
公認会計士・税理士:金子 太妥志
公認会計士(登録番号14762)税理士(登録番号112259)
目次
フリーレントとは?基本の仕組みをおさらい

フリーレントとは、賃貸借契約において入居後の数ヶ月間(一般的には1ヶ月~半年程度)の賃料(家賃)を無料とする契約形態のことです。
貸主(オーナー)にとっては「空室期間を短縮できる」「実質的な値下げをしつつも、将来の募集家賃(成約家賃)の基準を下げずに済む」というメリットがあり、借主(企業)にとっては「移転初期のキャッシュアウトを抑えられる」という、双方にメリットがある仕組みです。
実務上注意しなければならないのは、「契約書上で家賃が0円だからといって、会計上もそのまま0円で処理して良いとは限らない」という点です。
さらに最新の税制改正により、企業の会計方針の選択が税務にも直接影響を与えることになりました。
フリーレントの「会計処理」:2つの考え方

フリーレントの会計処理には、大きく分けて① 契約上の支払日に合わせて費用化する方法(契約書通り)と、② 契約期間全体で按分して均等に費用化する方法(期間按分)の2つのアプローチが存在します。
新リース会計基準の導入などを背景に、現在は企業の規模や採用している会計方針によって、どちらの方法を選択すべきかが明確に分かれるようになっています。
① 契約上の支払日に合わせる方法(中小企業向・実務上多数)
フリーレント期間中は家賃が「発生していない」と捉え、無料期間中は仕訳を起こさず、有料期間が始まってから実際に支払う金額を費用計上する方法です。
メリット
契約書と通帳の動き、仕訳が完全に一致するため、実務が非常にシンプル。中小企業で広く採用されています。
デメリット
契約期間全体で見ると、前半は費用が過少に、後半は過大に見えるため、期間損益の適切な把握(収益費用対応の原則)という観点からは弱さがあります。
② 契約期間全体で按分する方法(管理会計・上場企業基準)
フリーレントを含めた契約期間全体の総家賃を算出し、それを契約月数で均等に割った金額を毎月の「支払家賃」として計上する方法です。
メリット
毎月均等に費用が計上されるため、月次の業績管理や期間損益の歪みを防ぐことができます。上場企業や、新リース会計基準等に準拠する企業ではこちらが必須、あるいは推奨されます。
デメリット
無料期間中にも仕訳が発生し、未払金や前払費用などの調整勘定が必要になるため、実務がやや複雑になります。
「法人税」の取扱いは令和7年4月以後どう変わった?

従来、法人税法上は「債務の確定」に基づいて損金算入されるのが原則(債務確定主義)であったため、フリーレント無料期間中に「②契約期間全体で按分する方法」で帳簿上支払家賃を計上しても、税務上は損金(経費)として認められず、決算で別表調整(申告加算)を行う必要がありました。
しかし、新リース会計基準の公表等に伴い、令和7年4月1日以後に開始する事業年度から「法人税基本通達12の5-3-2(無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入)」が新設されました。これにより、税務上の取扱いが大きく明確化・緩和されました。
改正後の法人税のポイント:会計処理との一致が容認へ
新設通達により、課税上の弊害がない限り、会計上で「② 契約期間全体で按分する方法」を採用して損金経理(帳簿に費用として計上)している場合は、税務上もその按分額をそのまま損金の額に算入することが認められるようになりました。
これにより、自社の管理方針に合わせて、①又は②のいずれの方法を選択しても税務上のペナルティが原則として発生しなくなりました。
ただし注意!期間按分が認められない「課税上の弊害」2つのルール
どんな契約でも按分損金算入が認められるわけではありません。通達では、以下のいずれかに該当する場合は「課税上の弊害がある」とみなされ、期間按分による損金算入は認められず、従来の支払日基準(有料期間になってから損金算入)を強制されることになります。
ルール1:著しいディスカウント(2割ルール)
「フリーレント期間が設定されていない場合に本来払うべき賃料総額」と「実際の契約総額」の差額が、実際の契約総額のおおむね2割を超える場合は、期間按分が認められません。
フリーレント期間があまりにも長すぎ、実質的な値引き幅が大きすぎるケースが該当します。
ルール2:決算期におけるフリーレントの偏り(5割ルール)
契約開始日の属する事業年度において、その年度内の賃借期間のうち、おおむね50%を超える期間がフリーレント(または通常より少額)である場合で、かつ、その契約のフリーレント期間が通算して4ヶ月を超える場合です。
例:3月決算の法人が、2月から2年契約を開始し、最初の5ヶ月間をフリーレントとした場合、その事業年度は2月・3月の100%が無料期間となり、かつフリーレントが4ヶ月超であるため、この事業年度においては按分損金算入が認められない可能性があります。
「消費税」およびインボイス制度上の取扱い

法人税で「期間按分」による損金算入が認められた一方で、消費税法上の取扱いは従来通り「支払日基準」が原則となります。ここに実務上の最大の「落とし穴」があります。
(1) 消費税の原則:支払期日基準(消基通9-1-20)
消費税は「資産の譲渡等の対価」に対して課税されます。賃貸借契約において資産の譲渡等の時期は、原則として「契約等によりその支払を受けるべき日」とされています。
そのため、法人税で期間按分を選択し、無料期間中に帳簿上「支払家賃」を計上したとしても、フリーレント期間中は対価の支払義務がないため、その月の消費税区分は「対象外(または不課税)」としなければなりません(仕入税額控除は不可)。
有料期間に入り、実際に家賃を支払ったタイミングで、その支払額に応じた消費税を仕入税額控除することになります。
(2) 例外:法人税の取扱いに合わせる方法(消基通9-6-2)とインボイスの影響
消費税法基本通達9-6-2には、法人税の益金・損金算入時期の別段の定めに従うことができる旨の規定があるため、借手・貸手双方が期間按分処理を行い、貸手側がフリーレント期間中も按分額に対応する「インボイス(適格請求書)」を毎月発行してくれる場合には、借手側も無料期間中から仕入税額控除を行うことが可能と考えられます。
しかし、貸手が従来の支払期日にしかインボイスを発行しない場合は、フリーレント期間中にインボイスが存在しないため、借手は仕入税額控除ができません。
実務上は、貸手側のインボイス発行方針を必ず確認する必要があります。
パターン別:フリーレントの具体的仕訳例

ここからは、具体的な数値を用いて、令和7年新通達に対応した実務仕訳例を解説します。
【前提条件】
- 契約期間:24ヶ月(2年間)
- フリーレント期間:最初の3ヶ月(家賃0円)
- 有料期間の家賃:月額 200,000円(税込 220,000円、うち消費税 20,000円)
- 総支払額:200,000円 × 21ヶ月 = 4,200,000円(税抜)
- 期間按分時の月額(税抜):4,200,000円 ÷ 24ヶ月 = 175,000円
- 弊害要件(2割ルール等)には抵触しないものとする。
パターンA:契約上の支払日に合わせて処理する場合
① 1〜3ヶ月目(フリーレント期間中)
支払が発生しないため、会計上も税務上も仕訳はなしです。
② 4ヶ月目以降(有料期間開始・毎月の支払い時)
毎月、実際に支払う220,000円を通常通り仕訳します。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
| 支払家賃(課税) | 200,000 | 普通預金 | 220,000 | 〇月分家賃支払 |
| 仮払消費税 | 20,000 |
税務調整: 会計と税務(支払日基準)が一致しているため、別表調整は不要です。
パターンB:契約期間全体で按分して処理する場合
※貸手からは有料期間(4ヶ月目以降)にのみインボイスが発行される一般的なケースを想定。
① 1〜3ヶ月目(フリーレント期間中・毎月末)
実際には支払いませんが、会計上は期間按分した額(175,000円)を費用計上します。消費税はインボイスがないため「対象外」とします。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
| 支払家賃(対象外) | 175,000 | 未払金 | 175,000 | フリーレント按分計上 |
最新の税務調整(法人税): 新設された基通12の5-3-2に基づき、損金経理しているため、別表四での加算調整は不要(そのまま損金算入)となります!(※令和7年3月以前の開始事業年度までは加算が必要でした)
② 4ヶ月目以降(有料期間開始・毎月の支払い時)
実際の支払額(税込220,000円)と、毎月の按分費用(税抜175,000円)の差額を、無料期間に積み上げた「未払金」から毎月25,000円ずつ取り崩していきます。
消費税は、発行されたインボイスに基づき、実際の支払額にかかる20,000円を全額認識します。
| 借方勘定科目 | 金額 | 貸方勘定科目 | 金額 | 摘要 |
| 支払家賃(対象外) | 175,000 | 普通預金 | 220,000 | 〇月分家賃支払(按分) |
| 未払金 | 25,000 | |||
| 仮払消費税 | 20,000 |
税務調整(法人税): 不要(毎月の帳簿上の金額がそのまま税務上も認められます)。
実務で落とし穴になりやすい4つの留意点

フリーレントの契約書をチェックする際、また決算を組む際には、以下のポイントに必ず留意してください。
①「途中解約時の違約金条項」の有無
フリーレント契約の多くには、「〇年以内に解約した場合、フリーレント期間中に免除した家賃を違約金として一括で支払うこと」といった短期解約違約金条項がついています。
もし途中で解約し、違約金が発生した場合は、その違約金が確定した事業年度において「雑損失」等の科目で損金算入(消費税は原則として損害賠償金のため「不課税」)となります。
② 共益費や管理費は「別」のケースが多い
「フリーレント3ヶ月」と書かれていても、無料になるのは「賃料(家賃)」だけで、「共益費」「管理費」「水道光熱費」は初月から満額請求されるケースがほとんどです。
請求書をよく確認し、無料にならない費用については初月から正しく支払家賃や共益費として費用処理(消費税課税)を行ってください。
③ インボイスの発行タイミングを契約前に確認する
パターンB(期間按分)を採用する場合、消費税の仕入税額控除を毎月均等に行いたいのであれば、貸手側に「フリーレント期間中も按分額でのインボイスを発行してもらえるか」の確認・交渉が必要です。
事前のすり合わせがないと、帳簿上の家賃金額とインボイスの金額が毎月ズレることになり、経理の確認作業が煩雑になります。
④ 個人事業主(所得税)にはこの通達は適用されない
今回の基本通達の新設は、あくまで「法人税」の取扱いです。所得税(個人事業主)においては同様の改正は行われていないため、原則通り「債務確定主義(支払日基準=パターンA)」による経理を行う必要があります。
個人事業主が期間按分を行っても、税務上の必要経費としては認められませんので注意してください。
フリーレントに関するよくあるQ&A

Q1. フリーレント期間中に、内装工事(造作工事)を行いました。この期間の減価償却費や工事費用はどのように扱いますか?
A1. 内装工事にかかった費用は、会社の「建物附属設備」などの固定資産として計上し、入居後(事業供用開始後)から減価償却を開始します。
フリーレント期間中であっても、その内装が完了し、自社として事業のために使用を開始(供用)した時点から減価償却が可能になります。まだ工事中で入居していない期間は減価償却できませんのでご注意ください。
Q2. 令和7年の通達改正によって、中小企業も必ず「期間按分(パターンB)」で処理しなければならなくなりましたか?
A2. いいえ、強制ではありません。従来通りの「支払日に合わせる方法(パターンA)」を選択することも引き続き認められています。
今回の通達改正は、「会計上で期間按分処理を行った場合でも、税務上でそれを容認する(別表調整を不要にする)」という趣旨の緩和措置です。
社内管理の手間を省きたい多くの中小企業においては、これまで通り「無料期間は仕訳なし、有料期間から支払額を計上」とする方が実務上シンプルでおすすめです。
Q3. 「2割ルール(課税上の弊害)」に引っかかってしまった場合、どのようなペナルティや処理になりますか?
A3. ペナルティ(罰金など)があるわけではありませんが、新設通達による「按分での損金算入の容認」が受けられなくなります。
そのため、もし会計上で「パターンB(期間按分)」を行って無料期間に支払家賃を計上していたとしても、税務上はそれを損金として認められないため、決算において「別表四で申告加算(留保)」の税務調整を行う(=従来の古い税務取扱いに戻る)ことになります。
まとめ:自社の規模と会計方針に合わせた選択を
令和7年4月1日以後の通達新設により、フリーレントの税務は「会計処理と税務処理を一致させることができる」ようになり、非常にすっきりとした選択が可能になりました。
- 社内管理の手間を減らしたい、税務申告をシンプルにしたい(主に中小企業)
⇒ 「支払日に合わせる方法(無料期間は仕訳なし)」がおすすめ
- 月次の損益を正しく把握したい、新リース会計基準を適用している(上場企業やその子会社など)
⇒ 「契約期間全体での按分処理(新通達により、別表調整なしで損金算入可能)」を選択
自社の状況に合わせて最適な方法を選択してください。判断に迷う場合や、実際の契約書が「2割ルール」などの弊害要件に該当するか不安な場合は、事前に顧問税理士にご相談ください。
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東京税理士会(登録番号:112259)
監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。
2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。








