こんにちは。マクシブ総合会計事務所です。
近年、日本の会計基準は国際財務報告基準(IFRS)との整合性を図るため、大きな変革期を迎えています。その中でも特に影響が大きいのが、2024年9月に公表された新リース会計基準(企業会計基準第34号)です。
本記事では、2027年から強制適用となるこの新しい基準について、従来の会計処理との違いや、企業の財務指標に与える具体的な影響、そして中小企業への影響を、会計事務所の視点から詳しく解説します。
マクシブ総合会計事務所 公認会計士・税理士 金子 太妥志
目次
なぜ今、リース会計が変わるのでしょうか。最大の理由は「国際的な比較可能性の確保」にあります。
世界標準であるIFRSや米国基準では、すでに「すべてのリースを貸借対照表に計上する」という考え方が定着しています。日本でもこれに合わせる形で、いわゆる「オフバランス処理」を原則として廃止し、透明性の高い財務報告を目指すことになりました。
これまでの日本基準では、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに分類し、「ファイナンス・リース」のみ原則として資産・負債として計上していました。しかし、新基準ではこの区分が撤廃され、借手側は原則としてすべてのリースを資産・負債として計上する「シングルモデル」が採用されます。
従来は費用処理(支払リース料)だけで済んでいたコピー機や車両、さらには不動産(オフィスや店舗)の賃貸借契約までもが、原則として「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表(B/S)に計上されます。
単なる契約期間だけでなく、延長オプションの行使が合理的に確実な期間なども含めて判断する必要があり、見積もりの要素が強まります。
「うちは上場していないから関係ない」と思われがちですが、実は間接的に大きな影響を受ける可能性があります。
新リース会計基準が強制適用されるのは、主に以下の企業です。
ここで注意すべきは「上場企業の連結子会社」です。規模が小さくても、親会社が上場していれば、連結パッケージ作成のために新基準に基づいたデータ提供を求められることになります。
いわゆる一般的な非上場の中小企業については、引き続き「中小企業の会計に関する指針」や「中小会計要領」に基づき、従来通りの賃貸借処理(オフバランス処理)を継続することが認められています。
しかし、「義務ではないから無視して良い」とは言い切れない面もあります。
強制適用の対象外であっても、以下のケースに該当する中小企業は準備が必要です。
銀行が融資判断を行う際、企業の財務諸表を「実質的な実態」に合わせて修正して評価することがあります。たとえ帳簿上はオフバランスであっても、多額のリース債務や不動産賃借料を抱えている場合、銀行側の分析ソフトによって「潜在的な負債」としてカウントされ、自己資本比率の見かけ上の悪化が融資条件に影響する懸念があります。
前述の通り、親会社が新基準を適用する場合、子会社にも同様の管理が求められます。また、大手企業と取引がある場合、取引先評価の一環として、新基準に準拠した財務情報の開示を求められるケースが今後増えていくと予想されます。
将来的に上場を検討している企業は、直近期だけでなく「直前々期」から新基準に対応した会計処理を行う必要があります。上場準備のスケジュールから逆算すると、今すぐの対応が必須となるケースも少なくありません。
新基準を適用した場合、企業の「決算書の見栄え」は以下のように変化します。
| 財務指標 | 変化の傾向 | 主な理由 |
| 総資産・総負債 | 大幅に増加 | リース負債・使用権資産がB/Sに載るため |
| 自己資本比率 | 低下 | 分母となる総資産が膨らむため |
| 営業利益 | 改善(見かけ上) | 支払リース料(販管費)の一部が支払利息(営業外費用)へ移るため |
| EBITDA | 改善 | 支払リース料が減価償却費と利息に置き換わるため |
特に建設業や製造業など、高額な重機や設備をリースで導入している業種や、店舗を多数展開する小売・飲食業では、負債総額が数千万円〜数億円単位で変動する可能性があります。
今回の改正で最も「重い」とされるのが、オフィスや店舗の家賃です。
これまでの日本基準では、オフィス家賃は単なる「費用」でしたが、新基準では「場所を借りる権利」という資産として計上し、将来の支払義務を負債として載せる必要があります。
将来支払う家賃を「現在の価値」に割り引いて計算する必要があります。
契約書が2年更新であっても、実際には10年入居し続ける予定であれば、10年分の家賃を負債計上する判断が必要になる場合があります。
会計事務所として、顧問先の皆様には以下の3ステップでの準備を推奨しています。
「少額リース(300万円以下)」や「短期リース(12ヶ月以内)」はオフバランス継続が可能な免除規定があります。まずはどの契約がオンバランス対象になるかを仕分けします。
新基準を適用した場合、自己資本比率が何%下がるのか、利益がどう動くのかを試算します。これは銀行交渉の際の「事前説明」にも役立ちます。
手作業での計算はミスを誘発します。お使いの会計ソフトが新基準に対応しているか、あるいはリース管理ソフトの導入が必要か検討を始めてください。
新リース会計基準は、単なる会計処理の変更ではなく、企業の「財務戦略」や「管理体制」を根本から問い直す大きな転換点です。
たとえ現在、強制適用の対象外である中小企業であっても、社会全体の会計スタンダードが「オンバランス」へ移行していく流れを無視することはできません。将来的な資金調達や事業承継、上場を見据えるのであれば、この機会に自社のリース契約の実態を正確に把握しておくべきでしょう。
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監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。
2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。