「給与」それとも「外注費」?フリーランス・一人親方と長く良い関係を続けるための、税務・経理のやさしい確認ポイント
こんにちは。マクシブ総合会計事務所です。
自社の事業を支えてくれるフリーランスや建設現場の一人親方は、経営において欠かせない大切なビジネスパートナーです。
しかし、経理や税務処理の場面で多くの中小企業や事業主が頭を悩ませるのが、「支払う報酬は『外注費(経費)』として処理して良いのか、それとも『給与』とみなされるのか」という問題です。
もし税務調査で「外注費ではなく給与である」と認定(否認)された場合、過去数年分にわたり消費税の仕入税額控除が否認されるほか、源泉所得税の追徴や不納付加算税・延滞税など、大きな財務的ダメージを受けることになります。
お互いに気持ちよく、そして長く良い関係を維持して事業を発展させるためにも、事前に税務上のルールと契約・働き方の実態をクリアにしておくことが不可欠です。
今回は給与と外注費との違いについて確認していきましょう。
監修 マクシブ総合会計事務所 公認会計士・税理士:金子 太妥志 公認会計士(登録番号14762)税理士(登録番号112259)
税務上で「外注費(経費)」として認められるための基本的な判断基準

税務上、たとえ契約書のタイトルが「業務委託契約書」や「請負契約書」であっても、実態が雇用関係に近ければ「給与」と判断されます。
国税庁の通達(所得税基本通達や建設業等の通達)に基づき、主に以下の5つの基準(要素)で総合的に判断されます。
総合判断の原則
どれか1つの基準だけで機械的に決まるわけではなく、業務の実態全般を総合的に考慮して判断されます。そのため「形式的な契約書」だけでなく、「実際の現場での働き方」を整えることが最も重要です。
実務の変化:インボイス以降、より実態や契約の明確さが求められている現状
インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されて以降、税務当局および企業の経理現場における「外注費と給与の区分」へのチェックはより厳密になっています。
• 消費税の控除関係
外注費として処理する場合、相手方が免税事業者の場合は経過措置に応じた控除制限(またはインボイスの発行)が関わります。
一方、給与はそもそも消費税の対象外(不課税)です。
• 実態調査の透明化
請求書(インボイス)の発行状況や契約内容、支払明細が正確に整合しているかが、税務調査で真っ先に確認されます。
「インボイスがないから給与にする」「外注費の方が節税になるから外注にする」といった安易な処理は、調査時に非常に高いリスクを伴います。
安心して仕事をお願いするための契約や領収書・請求書のルール
後からの税務トラブルを防ぎ、パートナーも安心して業務に専念できるようにするために、以下の実務ルールを徹底しましょう。
◆業務委託契約書の締結と明記
契約書には「請負」または「準委任」であることを明記し、業務の範囲、納品物(成果物)、検収基準、やり直しの負担条件などを明瞭に記載します。
なお、2024年11月に施行された「フリーランス新法」により、フリーランスへ業務を発注する際は、これらの取引条件を書面やメール等で明示することが法律で義務化されています。税務トラブルを防ぐ意味でも、法律を遵守する意味でも、口約束は避けて必ず書面等に残しましょう。
◆請求書の定期発行・内容の具体化
毎月、パートナーから正規の請求書を発行してもらいます。
請求明細には「〇〇業務一式」「〇〇工事成果物代金」など、提供した役務や成果物の内容を具体的に記載してもらいましょう。
◆現場での管理方法の見直し
タイムカードでの出退勤管理や、社内従業員と全く同一の指示書による拘束は避けます。「いつ・どこで作業するか」はある程度パートナーの裁量に委ねる運用を心がけます。
Q&A:「専属だったら?」「道具を貸してたら?」など、現場のよくある疑問
Q1. 特定の人に「専属」で頼んでおり、他社の仕事をしていない場合は「給与」になりますか?
A. 他社の仕事を兼業していない(実質的に専属である)ことだけで直ちに「給与」と決め付けられるわけではありません。
ただし、専属であるうえに時間拘束や指揮命令がある場合は給与と認定される危険性が高まります。業務の代替性や道具の自給など、他の要素で請負の実態があるかをしっかり補強することが大切です。
Q2. 高額な専門工具や車両を会社側から貸与している場合はどうなりますか?
A. 道具や車両の無償貸与は「給与認定」に傾く強力な要素となります。
もし会社側の用具を使用してもらう場合は、「有償でのレンタル契約(工具代(または機材代)・車両費の相殺または別手配)」とするか、基本的な手工具や機材は自己所有のものを持参してもらう運用に改めることが推奨されます。
Q3. 時給や日給計算で報酬を支払っている場合はダメでしょうか?
A. 時間の拘束(時給・日給)に対する支払いは「給与」と見なされやすい最大の特徴です。
外注費とする場合は、「1現場あたり〇〇円」「成果物1件あたり〇〇円」という単価設定や、業務見積もりに基づく「請負金額」の形式にするのが原則です。
税務の疑問をスッキリさせて、会社もパートナーも安心な経営へ

フリーランスや一人親方との関係において、「外注費」か「給与」かの区分は、単なる勘定科目の違いではなく、働き方の実態と契約のあり方そのものを問うものです。
インボイス制度の導入やフリーランス新法の施行など、外部パートナーとの取引ルールは近年大きく変化しています。
曖昧なまま関係を続けていると、税務調査で予期せぬ追徴課税を受け、結果として大切なビジネスパートナーとの信頼関係まで損ねてしまうリスクがあります。
事前に契約実態を整え、お互いにクリアな状態で事業に取り組むことこそが、双方の成長と持続可能な経営につながります。
「現在の契約内容で大丈夫か不安がある」「現場の運用に合わせたアドバイスが欲しい」という場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
【参考資料(国税庁情報)】
・国税庁HP
・国税庁 通達「大工工事業者等に対する所得税の源泉徴収等の取扱いについて」
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東京税理士会(登録番号:112259)
監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。
2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。


