「はぐくみ年金」導入のメリットと実務上の留意点についてわかりやすく解説します!
こんにちは。マクシブ総合会計事務所です。
昨今、少子高齢化による公的年金への不安や、深刻な労働力不足を背景とした「人材の確保・定着」が、多くの経営者様にとって最優先事項となっています。
その中で、中小企業を中心に導入が急増しているのが、新しい退職金・年金インフラである「はぐくみ年金(確定給付企業年金:DB)」です。
本記事では、財務・税務・労務のトリプル視点から「はぐくみ年金」のメリットと、導入にあたって企業側が考慮すべき具体的な実務ポイントを分かりやすく解説します。
マクシブ総合会計事務所
公認会計士・税理士:金子 太妥志
公認会計士(登録番号14762)税理士(登録番号112259)
はぐくみ年金とは?特徴は「原則元本確保」と「高い柔軟性」
従来の企業型DC(確定拠出年金)は、従業員自身が自己責任で投資信託などを運用する制度であり、運用の成果によって将来の受取額が変動します。
一方、「はぐくみ年金」は確定給付企業年金(DB)の仕組みを活用した制度です。
最大の特徴は、国が認可した基金が資産を管理・運用するため、従業員が受け取る給付額は「原則として元本(および所定の利息)が確保されている」点にあります。
投資に馴染みのない従業員でも、リスクを負わずに安心して将来の資産形成を行える仕組みとして注目されています。
掛金の損金算入と社会保険料・税金の適正化
税務および労務コストの観点から、「はぐくみ年金」は会社・従業員の双方に非常に効率的なメリットをもたらします。
• 法人税の節税効果がある
会社が負担する掛金は、全額が「福利厚生費」などの科目で損金算入が可能です。
• 社会保険料・所得税・住民税の適正化(選択制の場合)
「選択制」を採用した場合、従業員は自身の給与の一部を掛金として拠出することを選択できます。
拠出した掛金分は「給与」とみなされないため、会社・従業員双方の社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)の負担が適正化されます。
また、従業員にとっては所得税や住民税の軽減にも直結します。
実務上のポイント(インフォームド・コンセント) 社会保険料の減少は、将来受け取る老齢厚生年金の受給額や、傷病手当金・出産手当金などの各種給付額に影響を与える場合があります。
導入時には、この減額リスクを含めた個別シミュレーションと、従業員への丁寧な説明(インフォームド・コンセント)が不可欠です。
加入資格と「中途退職時」にも受け取れる高い流動性
導入実務においては、厚生労働省(地方厚生局)の認可を受けた基金への加入手続きや、社内規定(賃金規程・退職金規程)の改定が必要です。
• 幅広い加入資格
原則として厚生年金保険の被保険者である従業員が対象です。
正社員だけでなく、社会保険の加入要件を満たすパート・アルバイトスタッフまで幅広く対象に含めることができます(※役員の加入については、報酬規程や税務上の要件に留意が必要です)。
• 最大の強み:退職時にすぐ受け取れる(高い流動性)
企業型DCやiDeCoは原則「60歳まで引き出し不可」という強い資金拘束性があります。
しかし、はぐくみ年金は中途退職時に、その時点までの積立金を退職一時金(またはポータビリティ)として受け取ることが可能です。
もちろん、転職先の企業年金やiDeCoへ資産を持ち運ぶ(ポータビリティ)ことも選択できます。
また、育児休業や介護休業などの休職時には、掛金の拠出を柔軟に休止・再開できる仕組みになっています。
受取時の税制優遇(出口戦略)
従業員にとって、将来や退職時に受け取る「出口」での優遇措置も非常に手厚くなっています。
◆退職一時金としての受取
退職時に一括で受け取る場合は「退職所得控除」が適用されます。
通常の給与や賞与に比べて税負担が大幅に軽減されるため、手取り額を最大化できます。
◆年金としての受取
規約に基づき年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」の対象となり、こちらも税制上の優遇措置を受けられます。
企業側の財務リスク(補填義務)とコストに関する留意点
「はぐくみ年金」は確定給付年金(DB)の一種であるため、企業型DCとはリスクやコストの所在が異なります。以下をご確認ください。
①元本確保の裏返しと財務リスク
従業員に対して元本(および所定の利息)を保証する仕組みであるため、万が一、基金全体の運用パフォーマンスが著しく悪化し、積立不足が生じた場合には、将来的に会社側が追加の掛金拠出(穴埋め)を求められる財務リスク(補填義務)がゼロではありません。
②運用の外部委託によるリスク軽減
ただし、はぐくみ年金は複数の企業が参加する「総合型」の基金であり、専門家による手堅い運用等が中心となっているため、個別の会社が過度な運用リスクを背負うケースは極めて稀です。
③会社側のランニングコスト
導入時には、会社側に初期費用や毎月の管理手数料(従業員1人あたり数百円程度)が発生します。そのため、「社会保険料の削減メリット」と「会社が負担する事務コスト」のバランスを事前に試算しておく必要があります。
Q&A(よくある質問)
Q1:中小企業や小規模な事業所でも導入できますか?
A:はい、導入可能です。
従業員数が数名の小規模オフィスや、クリニック、保育園、福祉施設、美容室などの中小企業を中心に広く導入されています。大企業のような手厚い退職金制度を、コストを抑えてスマートに構築できるため、採用活動における強力なアピールポイント(求人票への記載など)になります。
Q2:すでに企業型DC(確定拠出年金)を導入していますが、併用はできますか?
A:はい、併用可能です。
ただし、2024年12月の法改正により、併用時の企業型DCの拠出限度額は「5.5万円から、はぐくみ年金の『他制度掛金相当額』を差し引いた金額」となるルールが適用されています。
特に、2026年4月以降は、はぐくみ年金の他制度掛金相当額が24,000円に改定されるため、企業型DCの月額上限が31,000円に制限されます。
すでに企業型DCでこれ以上の金額を拠出している従業員がいる場合などは、現在の退職金規程や賃金規程との整合性を緻密に精査・調整する必要があるため、事前の制度設計が不可欠です。
Q3:ライフステージの変化に合わせて、掛金の金額を途中で変更できますか?
A:はい、原則として年1〜2回などの定められた時期に変更が可能です。
ライフステージ(結婚、出産、住宅購入など)に合わせて、拠出額を増やしたり減らしたりできる柔軟性があります。
※ただし、以下の点にご注意ください。
• 「0円」への変更(停止)は不可: 掛金は毎月1,000円から設定可能ですが、退職や休職などの特定の事由がある場合を除き、個人の都合により途中で0円にして積立を停止することは制度上できません(下限1,000円)。
そのため、無理のない金額からスタートすることが推奨されます。
• 社内ルールの確認が必要: 会社の規約によって具体的な変更ルール(変更可能な月や回数など)が定められているため、事前の社内手続きが必要です。
「はぐくみ年金」の導入で会社も従業員も笑顔に!

「はぐくみ年金」の導入は、従業員にとっては「手取りを賢く確保しながら、手堅く退職金を積み立てられる」極めてメリットの大きい制度です。
また企業側にとっても、実質的なコスト負担を抑えながら「従業員の未来を支える誠実な企業」としての人材採用力・定着力を飛躍的に向上させるインフラとなります。
社会保険料の減少に伴う将来の年金額への影響や、導入・維持コストのバランスといった留意点を適切に理解し、自社に最適な設計を行うことが成功の鍵となります。
当事務所では、導入による財務効果のシミュレーションから、規約・就業規則の改定アドバイス、従業員様向けの説明会の実施まで幅広くサポートしております。
「自社ならどれくらい効果(削減・コスト)が出るか知りたい」「企業型DCとどちらが合うか比較したい」とお考えの経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
【お知らせ】社会保険労務士法人を設立しました!
この度、マクシブ社会保険労務士法人を設立いたしました。
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東京税理士会(登録番号:112259)
監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。
2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。


