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【令和8年度税制改正】「1億円の壁」が消える?高額所得者への課税強化を徹底解説

こんにちは。マクシブ総合会計事務所です。 

 

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令和7年12月26日に閣議決定された「令和8年度税制改正大綱」。今回の改正では、物価高対策としての基礎控除引き上げや「年収の壁」対策が注目を集める一方、高額所得者に対しては非常に厳しい「負担適正化措置の見直し(課税強化)」が盛り込まれました。 

いわゆる「1億円の壁」を是正するために導入された制度が、わずか数年で大幅に強化されることになります。本記事では、この改正の背景から具体的な計算式の変更、そして実務上の影響について、会計事務所の視点で詳しく解説します。 

改正の背景:なぜ「高額所得者」が狙われるのか

日本の所得税は、所得が高くなるほど税率が上がる「超過累進税率」を採用しています。しかし、株の売却益や配当などの「分離課税」は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)であるため、所得の大部分を株の利益が占める富裕層は、逆に税負担率が下がってしまう現象が起きていました。 

これが統計上、所得1億円付近を境に税負担率が減少に転じることから「1億円の壁」と呼ばれています。 

政府は公平性を確保するため、令和5年度改正で「極めて高い水準の所得に対する負担適正化措置(ミニマム課税)」を導入し、令和7年分から適用が始まります。しかし、今回の令和8年度改正では、「さらなる公平性の確保」を名目に、適用初年度を待たずしてさらなる強化(増税)が決定されました。 

改正の概要:何がどう変わるのか?

今回の改正のポイントは、「対象者の拡大(ハードルの低下)」と「税率の引き上げ」の2点に集約されます。 

基準所得金額から控除する「特別控除額」の半減

現行制度では、基準所得金額から3.3億円を差し引くことができましたが、これが1.65億円に引き下げられます。これにより、これまで対象外だった層も広く課税対象に含まれることになります。 

適正化税率の引き上げ

現行の22.5%から30%へと大幅に引き上げられます。 

改正前後の比較表

項目 改正前(令和7年分〜) 改正後(令和9年分〜)
特別控除額 3.3億円 1.65億円
適用税率 22.5% 30%
追加徴収額 (A – 3.3億円)×22.5% – B (A – 1.65億円)×30% – B

※A:基準所得金額(総合課税所得+分離課税所得など) 

※B:通常の所得税額(配当控除後) 

※追加徴収額がプラスになる場合のみ、その差額が課税されます。 

具体的なシミュレーション:影響が出る「ボーダーライン」

「自分には関係ない」と思われがちですが、今回の改正で影響を受けるラインが劇的に下がりました。 

これまでは、所得がすべて株式譲渡益(税率15%)だった場合、所得が約10.3億円を超えない限り追加課税は発生しませんでした。しかし、改正後はこのラインが約3.3億円まで引き下がります。 

ケーススタディ:株の売却益が5億円ある場合

(簡略化のため、所得税のみ・復興税等は除外して計算しています。) 

  • 通常の所得税(15%):5億円×15% = 7,500万円
  • 改正後のミニマム課税計算:(5億円 – 1.65億円)×30% = 1億50万円
  • 差額(追加納税額):1億50万円 – 7,500万円 = 2,550万円の増税

改正前であれば、このケースでは追加課税は「ゼロ」でした。しかし改正後は、M&Aや自社株の売却などで約3.3億円を超える所得が発生した場合、追加での所得税によるキャッシュアウト増を覚悟しなければなりません。 

今後の影響と実務上の注意点

今回の改正は、令和9年(2027年)分の所得税から適用されます。経営者や資産家の方々が意識すべきポイントは以下の通りです。 

M&Aや事業承継のタイミング

自社株を売却してリタイア資金を作る、あるいは資産管理会社へ株を移管するといった計画がある場合、実行時期によって税負担が大きく変わる可能性があります。令和8年末までに実行するか、改正後の令和9年以降にするかで、手残り資金に致命的な差が出るでしょう。 

住民税を含めた「実質税率」の衝撃

今回の改正は所得税に関するものですが、これに住民税(5%)を加えると、分離課税所得に対する実質的な負担率は35%に達する可能性があります。従来の「株の利益は20%」という常識が、高額所得者層においては崩壊したと言っても過言ではありません。 

不動産売却への波及

この措置は株式だけでなく、不動産の譲渡所得も「基準所得金額」に含まれます。大規模な土地や収益物件を売却し、単年で大きな利益が出る場合も、同様の増税リスクにさらされます。 

まとめ:早めのプランニングが不可欠

令和8年度税制改正は、中低所得者への「減税」をアピールする一方で、高額所得者への「課税強化」をより鮮明に打ち出した内容となりました。特に「3.3億円」という数字が頭にあった方は、その半分である「1.65億円」が基準になったことを重く受け止める必要があります。 

「いつ、どの資産を、どのように動かすか」という出口戦略において、税金の試算はより複雑化しています。 

資産総額が数億円を超えるオーナー経営者様や投資家の方は、令和9年の適用開始を待たず、今すぐ現状の資産構成と将来の譲渡計画を再点検することをお勧めします。 

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税理士:金子 太妥志
【監修】税理士:金子 太妥志
東京税理士会(登録番号:112259)

監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。

2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。

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