こんにちは、マクシブ総合会計事務所です。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されてから、日々の経理業務において「請求書」や「領収書」の確認作業に追われている方も多いのではないでしょうか。
制度には基本のルールだけでなく、特定の業態や取引形態に合わせた「特例」がいくつか存在します。その中でも、委託販売や代理店取引を行う企業にとって非常に重要なのが「媒介者交付特例(ばいかいしゃこうふとくれい)」です。
今回は、経理担当者の方が押さえておくべき「媒介者交付特例」の仕組みと要件、そして実務上のポイントについて分かりやすく解説します。
目次
通常、インボイス(適格請求書)は、「売り手(商品やサービスを提供した人)」が「買い手」に対して交付するのが原則です。
とは言え、ビジネスの世界には、第三者が間に入って商品を販売する「委託販売」のような形態があります。この場合、買い手は「誰から買ったか」よりも「どのお店(仲介者)で買ったか」を認識していることがほとんどです。
媒介者交付特例とは、売り手に代わって、「媒介者(仲介に入った受託者)」が、媒介者自身の氏名や登録番号を記載したインボイスを交付できるという特例制度です。
もっとも身近な例は、スーパーマーケットの「産直野菜コーナー」です。
もしこの特例がないと、スーパーはレシート(インボイス)を発行する際、大根はA農家の登録番号、キャベツはB農家の登録番号……と、商品ごとに別々のインボイスを発行しなければならなくなります。これは実務上、ほぼ不可能です。
そこで、「スーパー(媒介者)の名前と登録番号でまとめてインボイスを発行して良いですよ」というのがこの特例の趣旨です。
この特例は勝手に使って良いわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。経理担当者として確認すべきは以下の2点です。
これが最も重要なポイントです。
媒介者(受託者)が自身の番号でインボイスを発行する場合でも、本来の売り手(委託者)が適格請求書発行事業者(インボイス登録済み)でなければなりません。
売り手が免税事業者である場合、この特例を使って適格請求書を発行することはできません。
売り手は、「自分はインボイス登録事業者です」ということを事前に媒介者に伝えておく必要があります。
実務上は、取引基本契約書に条項を盛り込んだり、別途「通知書」を取り交わすケースが一般的です。
通常のインボイスと、媒介者交付特例を使ったインボイスでは、記載内容にどのような違いがあるのでしょうか。
通常のインボイスでは「売り手の氏名・登録番号」を記載しますが、この特例を使う場合は以下のようになります。
| 記載項目 | 通常のインボイス | 媒介者交付特例のインボイス |
| 発行者の氏名 | 売り手の氏名・名称 | 媒介者の氏名・名称 |
| 登録番号 | 売り手の登録番号 | 媒介者の登録番号 |
つまり、買い手から見ると、あたかも「媒介者から購入した」かのような見た目の請求書・領収書になります。これにより、複数の委託者の商品が混在していても、媒介者の登録番号一つで処理が完結するため、事務負担が大幅に軽減されます。
ここからは少し実務的な話になります。この特例を使った場合、請求書の控え(写し)の保存ルールも通常とは少し異なります。
インボイスを交付した媒介者は、交付したインボイスの「写し(控え)」を保存する義務があります。また、それらを売り手(委託者)ごとに管理し、売り手に対して当該インボイスの写しを提供するか又は精算書等の形で売上税額などを報告する必要があります。
ここが間違いやすいポイントです。
本来、インボイス発行事業者(売り手)には、発行したインボイスの控えを保存する義務があります。しかし、この特例を使った場合、売り手自身はインボイスを発行していません。
その代わり、媒介者から交付されたインボイスの写しや精算書を保存することで、インボイスの控えを保存しているものとみなされます。
したがって、売り手側の経理担当者は、自分が発行した請求書控えではなく、仲介業者から送られてきたインボイスの写しや精算書を確実に保管する必要があります。
精算書には、「委託取引に伴う消費税額」などが明確に記載されている必要があります。
【精算書の記載例】
出所:国税庁「インボイス制度に関するQ&A」
媒介者交付特例は、委託販売や代理店ビジネスにおいて、事務処理を現実的なものにするための不可欠な制度です。
【経理担当者が覚えておくべき3つのポイント】
自社が「商品を預かって販売する側(受託)」なのか、「販売をお願いしている側(委託)」なのかによって、チェックすべき書類や保存義務が異なります。
取引先との契約形態をよく確認し、どのパターンに当てはまるのかを整理することから始めてみましょう。
複雑なインボイス制度ですが、一つひとつの「特例」の意味を理解すれば、なぜその処理が必要なのかが見えてきます。不明な点があれば、早めに税理士や上司に相談し、正しい処理を心がけてください。
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監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。
2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。