こんにちは。マクシブ総合会計事務所です。
和8年度の税制改正において、大規模な設備投資を検討している企業を後押しする、新税制が創設されました。それが「特定生産性向上設備等投資促進税制」です。
この税制は、これまでの優遇措置をさらに上回る「即時償却」や「強力な税額控除」が盛り込まれており、上手に活用すれば大幅な節税効果が期待できます。
しかし、大きなメリットがある反面、満たすべき条件や実務上の注意点を誤ると、優遇を受けられなくなるリスクも潜んでいます。今回は、制度適用前に知っておくべき本税制の概要と、税務処理上の注意点について分かりやすく解説します。
マクシブ総合会計事務所
公認会計士・税理士:金子 太妥志
公認会計士(登録番号14762)税理士(登録番号112259)
目次
この制度は、産業競争力強化法に基づき、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に沿って設備を取得した場合に、大きな税制優遇が受けられるものです。最大の目玉は、一定の大規模かつ高付加価値な設備投資を行った場合、「即時償却(投資額の全額をその期に一括で経費化)」または「投資額の最大7%の税額控除」を事業者自身が選択できる点です。
これまでの中小企業向け税制とは異なり、「建物」や「構築物」まで即時償却の対象に含まれる点が、実務上非常に大きなインパクトを持っています。
原則としてすべての業種。改正産業競争力強化法の施行日から令和11年3月31日までの間に経済産業大臣の確認を受けた青色申告法人。
取得価額の全額を、取得した年度に経費計上(償却)できる。
取得価額の7%(建物、建物付属設備、構築物は4%)を法人税額から直接差し引く。
| 対象資産 | 取得価額 |
| 機械装置 | 1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの |
| 工具及び器具備品 | 1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの(一事業年度の合計が120万円以上(単体40万円以上)のものも含む) ※事務用器具備品等は対象外 |
| 建物 | 単体での取得価額が1,000万円以上のもの ※本店、寄宿舎等の建物、福利厚生施設等は対象外 |
| 建物附属設備及び構築物 | 単体での取得価額が120万円以上のもの(一事業年度の合計が120万円以上(単体60万円以上)のものも含む、製造・生産等に直接関係するもの) |
| ソフトウエア | 単体での取得価額が70万円以上のもの |
令和11年(2029年)3月31日までに経済産業大臣に設備投資計画の確認を受け、確認から5年以内に取得・供用した資産が対象。
非常に手厚い優遇を受けられる反面、適用要件は従来のものより厳しく設定されています。大きく分けて「投資規模」と「収益性(ROI)」の2つの壁をクリアしなければなりません。
・中小企業者又は農業協同組合等: 5億円以上
・大企業等: 35億円以上
収益性(ROI)とは、Return on Investmentの略称で、投資した費用に対してどのくらい利益が出ているかを示す指標です。経済産業大臣の確認を受ける投資計画において、「ROI(投資利益率)が15%以上」となる見込みであること等が必要となります。
この税制を検討するにあたり、会計・税務の観点から特に注意すべきポイントをまとめました。
設備を取得した後に「この税制を使いたい」と言っても適用できません。必ず設備を取得(または着工)する前に、投資計画を策定し、経済産業大臣の確認を受ける必要があります。スケジュール管理が極めて重要です。
この税制の計画期間中は、既存の「中小企業経営強化税制」や「地域未来投資促進税制」など、他の設備投資関連の税制を重ねて適用することはできません。但し、過去に適用した中小企業経営強化税制の『繰越税額控除』を引き継いで使うことは認められています。
「どちらの税制を選択した方がトータルで有利か」を事前にシミュレーションする必要があります。
大企業が本制度を適用する場合、以下の追加要件を満たさないと適用除外(足切り)になります。
・継続雇用者の給与支給額が前年度比で1%(下記※の場合2%)以上増加していること
・国内設備投資額が当期減価償却費総額の30%(下記※の場合40%)を超えていること
※①資本金の額等が10億円以上かつ常時使用する従業員の数が1,000人以上、または②常時使用する従業員の数が2,000人超の大企業で、③当期が設立事業年度及び合併等事業年度のいずれにも該当せず前期の所得金額がプラス、または④当期が設立事業年度又は合併等事業年度に該当にする場合
税額控除(7%または4%)を選択した場合、当期の法人税額の20%が控除の上限となります。ただし、この3年間の繰越しが認められるのは、青色申告法人のうち「認定事業適応事業者(国際経済事情激変事業適応に関する計画の認定を受けた法人)」に限られますのでご注意ください。
対象になりません。本税制の対象は「新品(最新の設備等)」に限られます。
他の多くの優遇税制と同様、中古資産の取得や、他社からリースバックなどで譲り受けたものは対象外となりますのでご注意ください。
契約形態(ファイナンス・リースかどうか)によって扱いが異なり、即時償却は使えません。
自社で資産計上する「所有権移転外ファイナンス・リース」などの場合、税額控除は適用可能ですが、即時償却(一括での経費化)は選択できません。
原則として、事後的に要件を割り込んだからといって、遡って税制措置が取り消されることはありません。
あくまで「事前の計画」において、合理的な根拠に基づき年平均15%以上の利益率が見込まれているかどうかが審査の対象となります。ただし、当初の計画と著しく異なる実態がある場合や、虚偽の申請があった場合はこの限りではありません。
「特定生産性向上設備等投資促進税制」は、工場新設やDX推進などの大型投資を予定している企業にとって、キャッシュフローを劇的に改善させるチャンスとなります。
しかし、厳しい投資下限要件や、事前確認の手続き、他税制との選択など、実務上の判断を誤ると大きなリスクを伴います。
「うちの投資計画でも使える?」「即時償却と税額控除、どちらが得?」など、少しでも気になった場合は、投資を実行に移される前に、ぜひお気軽に当事務所までご相談ください。
東京都中央区のマクシブ総合会計事務所では、税務に関する関する最新情報や、お客様の状況に応じた適切なアドバイスを提供いたします。ご不明な点やご不安な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
この度、マクシブ社会保険労務士法人を設立いたしました。
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監査法人トーマツに入社し会計監査及び株式公開支援業務に従事。その後、野村證券株式会社において資金調達やM&Aに関する財務戦略の提案業務を手掛け、また、ベアー・スターンズ証券東京支店では不動産融資及び証券化業務に携わる。
2008年に独立し、マクシブ総合会計事務所及びマクシブ・アドバイザーズ株式会社を立ち上げ代表に就任。